生成AIを使ってiOSアプリを個人開発し、App Storeに複数本リリースしてきました。開発の流れや手続きの大変さは他の記事でも書きましたが、この総集編では「実際どうだったか」という結果と振り返りを中心にまとめます。

目次


AIを軸にした差別化戦略

個人開発でApp Storeに出すとき、「似たようなアプリがすでにある」問題は避けられません。暦変換も、食材リストも、ボードゲームも、既存のアプリがたくさんある。

そこで意識したのが、AIを取り入れることで既存アプリと差別化するという方針です。単機能のツールではなく、AIが何らかの付加価値を出すアプリを作ることに注力しました。

  • 暦変換AI — 西暦・和暦変換にAIによるその年の解説コメントを追加
  • スマート食材リスト — レシピからAIが自動で買い出しリストを生成
  • 野鳥鳴き声サーチ — AIモデル(BirdNET)で鳴き声から種類を判定
  • 熊よけベル — 熊の出没情報に応じた脅威音をAIが判断(予定機能)

「AIが入っているから面白い」というよりも、「AIがないと成立しない機能」を軸に設計することで、代替アプリとの差を出そうとしました。


リリースしたアプリと収益の実態

現在リリースしているiOSアプリは以下の通りです。

アプリ 概要 ダウンロード傾向
暦変換AI開発秘話 西暦・和暦変換+AIコメント 少ない
スマート食材リスト開発秘話 レシピからAIが買い出しリスト生成 少ない
ボードゲームAI開発秘話 オセロ・将棋・チェスのAI対戦+対人戦 少ない
スマホで麻雀開発秘話 iOS端末ホストでAndroid・PCから参加可能 3番手
野鳥鳴き声サーチ開発秘話 鳴き声AIで野鳥を判定・図鑑機能あり 稼ぎ頭
熊よけベル開発秘話 熊よけ音・歩数計・モーション自動起動 2番手
スマートページメモ開発秘話 Webページ保存・オフライン読書・AI要約 少ない

アプリ内広告収益は現在月1,700円程度です。年間換算すると約20,400円になり、Apple Developer Programの年会費(約15,000円)はなんとか回収できる水準になってきました。


稼ぎ頭は野鳥鳴き声サーチ

収益・ダウンロード数ともにトップは野鳥鳴き声サーチです。

このアプリが伸びた理由を振り返ると、「自分が本当に欲しくて作った」という点が大きいと思っています。趣味で野鳥を撮影していて、鳴き声から種類を調べられるアプリを探したのですが、自分が使いたいと思えるものが見つかりませんでした。オフラインで動く、日本の野鳥に特化している、図鑑として記録できる——こうした条件を全部満たすものを作った結果、同じニーズを持つ人に届いたのだと思います。

技術的にはBirdNET V3.0というAIモデルを使っており、日本の野鳥284種に絞り込んでFP16最適化したモデルをオンデバイスで動かしています。実装の詳細は野鳥鳴き声サーチのAIモデルについてに書きました。

2番手は最近リリースした熊よけベルです。登山・ハイキングの趣味と重なる実用アプリで、モーションセンサーで歩行を検知して自動起動する機能が好評のようです。

3番手はスマホで麻雀。iOS端末をホストに立てて、Android・PCのブラウザから参加できる仕組みは、エンジニアとしての仕事で得たホスト・クライアントモデルの知識が活きた部分です。


ヒットしなかったアプリから学んだこと

正直に言うと、暦変換AI・スマート食材リスト・ボードゲームAI・スマートページメモはほとんどダウンロードされていません。

振り返ると共通点があります。「自分が欲しい」より「あったら便利そう」という動機で作ったものです。

暦変換AIは愛用アプリの代替として作ったので動機は明確でしたが、既存アプリとの差別化が弱かった。スマート食材リストとボードゲームAIは「こういうの使う人がいそう」という想定で作ったもので、自分が日常的に使うかというとそうでもない。

野鳥鳴き声サーチや熊よけベルとの違いは、「自分がそのアプリを毎週使っているか」という点だったと思います。作った後も自分でヘビーユーズしているアプリほど、細かい改善が積み重なり、ユーザーにも刺さるものになっていく気がしています。


開発の流れと環境

開発はClaude Codeを中心に進めています。仕様を細かく伝えなくても「なんとなく」の形を提案してくれるため、最初の動くものができるまでが早い。コーディング自体は1日程度で動くものができ、そこからデバッグとUIの調整を繰り返す流れです。

Xcodeは主にシミュレーター確認・審査申請に使っています。2026年5月頃にXcodeのCoding IntelligenceがAgentモードに対応してから使いやすくなり、今はXcodeをメインにしています。

外出先でのアイデア整理や軽い修正はiPhoneのClaude Codeで行い、GitHubに直接プッシュしています。この開発フローの詳細はiPhoneのClaude CodeでiOSアプリを開発するにまとめました。


思ったより大変だった手続きまわり

コーディング以外の手続きが想像以上に大変でした。特にデベロッパ名を屋号に変更する作業です。

個人名でリリースしたあと、屋号に変えようとすると以下の手順が必要でした。

  1. 開業届の提出
  2. DUNSナンバーの取得
  3. 独自ドメインとメールアドレスの取得(フリーメールは審査に使えない)
  4. GitHub Pagesでプライバシーポリシーを公開
  5. 開業届を英語翻訳してAppleに提出

DUNSナンバーは取得に2〜3週間かかることがあり、その間は次の申請ができず待つだけという状況でした。申請の手続きよりもこの待ち時間が一番ストレスでした。

また、App Store審査自体は1週間程度かかり、審査員からの指摘への対応も発生することがあります。指摘の内容はやり取りが日本語でできたので助かりましたが、対応の内容はClaude に相談しながら進めました。


かかった費用と収支

項目 金額
Apple Developer Program(年会費) 約15,000円/年
ドメイン取得・サーバー費用 数千円/年
Mac mini M4(開発機) 約94,800円〜
月間広告収益 約1,700円

Mac mini M4は開発機として購入しました。選んだ理由は価格・静音性・AIコーディング中心の作業スタイルとの相性です。詳しくはClaude Codeで開発するためのMac mini M4環境に書いています。

現状でも年会費分はギリギリ回収できる計算で、アプリ数が増えて露出が増えれば、もう少し伸びる余地はあると思っています。


続けてわかったこと

個人開発を続けてきてわかったのは、「ニッチでも自分が本当に欲しいものを作る」方が結果につながるということです。

広いユーザー向けの汎用ツールより、「自分と同じ趣味・困りごとを持つ人向け」の専門性が高いアプリの方が、検索で見つけてもらいやすく、使ってもらえる確率も高い。野鳥鳴き声サーチがその典型例でした。

AIを活用した開発は、個人開発者の「作れるものの幅」を確実に広げてくれています。Swift未経験でもAIと組みながら動くアプリを作れた経験は、「次も作れる」という自信になっています。引き続き、自分が使いたいアプリを中心に作り続けていくつもりです。

全アプリは開発者ページにまとめています。