FIREシミュレーター は、FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立・早期リタイア)の達成可能性を試算するWebアプリです。インストール不要でブラウザから使えます。
目次
作った理由
資産運用や将来設計を考えるとき、「自分はいつFIREできるのか」という問いに手軽に答えてくれるツールが見つかりませんでした。既存のFIREシミュレーターは、単純に「生活費×25倍の資産が貯まれば達成」という静的な判定をするものが多く、副業収入が続く期間、退職金、年金の開始タイミングなど、実態に即した変数を組み込めるものが少なかった。
Excelで自分なりの計算シートを作っていたこともありましたが、パラメーターをいじるたびに数式を調整するのが面倒でした。スライダーを動かすだけでリアルタイムに結果が変わるものを作ろうと思ったのが出発点です。
何ができるか
入力できるパラメーターは以下の通りです。
| パラメーター | 説明 |
|---|---|
| 現在の年齢 | 20〜70歳の範囲で設定 |
| 現在の総資産 | 現在保有している投資・預金の合計 |
| 本業+副業収入(年) | FIRE前に継続する収入 |
| 本業+副業継続年数 | 何年後に収入ゼロになるか |
| 退職金(一時金) | 退職時に加算される一時金 |
| 生活費 | 年額または月額で入力可(切り替えボタンあり) |
| 運用利回り | 0.5〜8%を0.5%刻みで設定 |
| 年金(65歳基準) | 65歳受給時の年金額(年額または月額) |
| 年金受給開始年齢 | 60〜70歳の範囲で設定 |
出力は以下の4つです。
- 退職時の試算資産額 — シミュレーション上で退職時点に積み上がっている資産
- 4%ルール必要額 — 生活費×25倍の目標値
- 年間取り崩し可能額 — 退職時資産×4%
- 100歳までの資産推移グラフ — 資産残高・収入・支出・4%ルール必要額を一画面で確認
計算のしくみ
シミュレーションは現在の年齢から100歳まで1年刻みで資産を追跡します。基本的な計算式は以下です。
翌年の資産 = 今年の資産 × (1 + 運用利回り) + 副業収入 + 年金収入 − 生活費
退職年には退職金を一括加算します。副業収入は設定した継続年数が過ぎるとゼロになり、年金は設定した受給開始年齢から加算が始まります。
グラフには左軸(資産残高・4%ルール必要額)と右軸(収入・支出)の2軸を使っており、収入が途切れるタイミングや年金が加わるタイミングが視覚的に確認できます。
4%ルールの扱い方
4%ルール(トリニティ・スタディ)は「資産の4%を毎年取り崩しても30年以上資産が持つ」という米国株ベースの研究です。このシミュレーターでは4%ルールの必要額(生活費×25倍)を参考指標として表示しますが、判定はあくまでシミュレーション結果に基づいています。
なぜそうしたかというと、4%ルールはあくまで「取り崩しだけで生きる」ケースの話で、副業収入や年金が加わると実態とズレるからです。「資産が4%ルール必要額に届いていなくても、年金と副業で補えば100歳まで持つ」というケースが普通にあります。
ツール内の注意事項にも書きましたが、運用利回りが「(生活費−年金)÷資産」を上回るかどうかが実質的な分岐点になります。例えば生活費360万・年金80万・資産8,000万なら分岐点は (360−80)÷8,000 ≒ 3.5%。運用利回りが3%なら資産は緩やかに減り続け、4%なら増加に転じます。
年金の繰上げ・繰下げ計算
年金受給開始年齢を60〜70歳の間で設定できます。65歳基準からのズレに応じて受給額を自動で調整しています。
- 繰り上げ受給(60〜64歳): 1ヶ月につき −0.4%
- 繰り下げ受給(66〜70歳): 1ヶ月につき +0.7%
70歳まで繰り下げると65歳比で最大+42%になります。受給総額の欄には「何年受け取るか×調整後の年額」が表示されるので、何歳まで生きた場合にどちらが得かの参考になります。
工夫した点
スライダーと数値入力欄の連動
スライダーを動かすと即座に数値が変わり、数値欄を直接打ち込んでもスライダーが追随します。数値欄に月額で打ち込んだときにスライダーが年額に戻ってしまう問題(往復変換のズレ)に対処するため、フォーカスを外したときだけ最終値をスライダーのステップ幅に丸める処理を入れています。
生活費・年金の年/月切り替え
感覚的に月額で把握している人が多いため、年額と月額をボタン一つで切り替えられるようにしました。内部は年額で保持しており、表示だけを12で割っています。
枯渇の早期判定
グラフが100歳まで届かない(資産がゼロになる)場合、「就労中に枯渇」か「退職後何年で枯渇」かを分けて表示しています。退職前に枯渇する場合はそもそもFIREの話ではないので、メッセージで明確に区別しました。
実際に使ってみてわかったこと
作って自分で試してみると、年金の影響が思ったより大きいことに気づきました。70歳まで繰り下げた場合の受給額の増加幅と、それによって資産の減りが緩やかになる効果は、シミュレーターで視覚的に確認すると説得力があります。
また、生活費を月30万から25万に下げるだけでFIRE達成時期が数年単位で変わることもグラフで見るとわかりやすい。支出の削減が収入の増加と同じかそれ以上に効くという感覚が掴めます。
数字をいじりながら「どのパラメーターが一番効くか」を体感できるのが、Excelシートとは違うWebツールとしての良さだと思っています。